陰包(いんぽう)
首の症状に効くツボの紹介です。
足の厥陰肝経という経絡上の経穴:陰包(いんぽう)です。
一般的に陰包穴は膝疾患に関することに使われることが多いツボです。
しかし、この陰包は、首の凝り(首凝りからの頭痛を含む)はもちろん、寝違い、ムチウチ、頚椎ヘルニアにも効果があります。
特に、頚椎ヘルニアの患者さんに陰包を使うようになってから症状の緩和が著しいです。
因みに、当院の治療で症状が完全消失後、整形外科でMRIを受け「医師から『ヘルニアは完治してますよ。』と診断されました。」と喜びのご報告してくれた方が、今まで(2008年現在)で2名ありました。(私を含めると3名です)
※:当院では、治療により症状が消失した患者様に「高いお金を払って検査を受けてください」と特にお願いはしません。 その為、この方々以外にも完治した人は多いと思いますが、実数は不明です。
あくまでも私の知る限りですが、陰包穴が首の症状に効果があると謳っているものは今(2008年現在)のところ見つかりません。
(ただし、後日、故小川晴通先生が陰包よりも上部で首に効く反応点をご紹介してみえたのを「医道の日本」で見つけました。)
「院長のプロフィール」に書いてある通り、私自身が首のヘルニアで辛い思いをしましたので、同様の症状でお悩みの方のお役に少しでもなれば幸いであると思い、下記に位置と使い方をご紹介いたします。
位置は
位置は、右の写真の様に膝を90度ぐらいに曲げ約12cmぐらい上、大腿の内側にあります。
(赤い点)
内モモの半分より前側寄りで圧すとかなり痛いです。
(500円玉より少し大きい範囲を指で何箇所か圧して、一番痛いところを探してください。)
一般の方へ
このページを読まれた一般(素人)の方は、この陰包穴に爪楊枝を軽く押し当てて、約10秒ぐらいそのままにしてください。
その後、ここに市販のお灸「せんねん灸」(※)などをして下さい。
※:せんねん灸は熱さに5段階あります。当院では下から2番目のレギュラー(伊吹)タイプを勧めています。お近くのドラッグストアーで手に入ると思います。
軽い首の症状であれば、これだけでも緩和できると思います。
当院の患者様はもちろん、そうでない方に首の症状で相談されたとき、この陰包穴の使い方を教えるとその効果に喜ばれます。
但し、全く首が動かない重症の寝違いや、ムチウチ、頚椎ヘルニアなどは、脈診により経絡の歪を知り調えないと中々効果が出ないと思います。
特に重症で中々良くならない場合は、心の苦悩が関わっていることが考えられますので、早めの治療をお勧めします。
鍼灸師の先生方へ
もし、首の症状の治療でお困りの鍼灸師の先生がこのページを読まれましたら、陰包穴をお試しください。
上記のように一般の方でも効果がありますので、経絡治療に限らず効果はあると思います。
ここに私のやり方をご紹介しますのでご参考にしてください。
- 当院は経絡治療ですので、鍼は浅く1~3ミリしか刺しません。
- 置鍼ではなく単刺です。留める時間は5~10秒です。
- 当院ではパルスは使用しませんので、その効果は分かりません。
- お灸は透熱灸(灸点紙使用)を3~5壮です。
- 経絡治療の後、円皮針(セイリン製のパイオネックス06)を貼ってます。(09タイプでもいいと思います)
あくまでも私の知る限りですが、この陰包は、肝経実を調えるとき写法で使う経穴だと思います。
しかし、肝経虚のときも丁寧に補法すれば効果的に使えると思います。
ちょっと余談ですが、
先の2名の方は、頚椎だけでなく腰椎にもヘルニアがありましたが、お二方共に腰椎のついてもヘルニアが消失していることを医師が確認しています。
その内のお一人について、ちょっとお話します。
この方は、首に1箇所、腰に2箇所のヘルニアで、首周りの痛みと両上肢のシビレ、両手の握力は10kg位まで落ち、腰痛と坐骨神経痛で歩けなく殆ど寝たきり状態でした。
これらの痛みに加え、原因不明の微熱と消化不良がずーっと続いていました。
鎮痛剤をはじめ、症状を抑える他の薬はどれも効いていませんでした。
そのため家事も殆ど出来ず、お仕事までも辞めることになってしまいました。
医師からは手術も勧められていましたが、手術のリスクを考慮し鍼灸だけで治すと決心されました。
当時は往診専門で治療をしていましたので、始めは毎日、その後症状が緩和するに従い週3回で往診をしました。
約半年後、何れの症状もかなり緩和したので、衰えた筋肉を戻す為に水中リハビリに通ってもらうことにし、病院でMRIの再検査を受けたところ、ヘルニアの完全消失が判り完治が確認できました。(担当医師も驚いていたそうです)
その2ヶ月後(治療から8ヵ月後)には、新しい職場が見つかり今でも元気に働いてみえます。
因みに、頚椎に限らず腰椎のヘルニアで手術を勧められている方でも、当院の治療で症状が完全消失した方、又は著しい緩和をした方が他にも沢山みえます。
そして、ヘルニアの手術しても痛みが消えない方もご来院されますが、その様な方も良くなっています。
私は、頚椎、腰椎問わず椎間板ヘルニアは経絡治療で良くなるものだと思っています。
何故、陰包を使うようになったかというと
話がちょっと逸れましたが、陰包に戻します。
元々私は、肝経という経絡が弱くなり易いタイプなんです。
自分を治療していく中で、肝経を要穴以外で補えることは出来ないかと日々模索していました。
そんな中、私自身、合気道で受身に失敗し首を傷めたことがあったんです。
(かなり症状はひどく、この時は「ヘルニア再発か?」と、落ち込んでました。)
10ヶ月ぐらい治療した甲斐あってか、首の痛みは少し軽減していたので、大好きなスキーをはじめました。
そんなある日、運悪く?(…結果的には運が良く)転倒し左膝を傷め、その治療をする為に陰包あたりに鍼灸をしていました。
すると不思議なことに首の痛みが軽減し動きやすい事に気付きました。
「ひょっとして・・・・、」と思い、それから陰包を膝だけでなく首の治療にも積極的に使ったところ、そこから私の首の症状は激減し見事に回復出来ました。
そして、あの辛い日々が嘘のように今では全く首の症状は有りません。
(私が鍼灸師になると決めた動機、「自分で首のヘルニアを治す」が39歳のときにめでたく叶った訳です。)
それからです。首の症状の患者さんにも積極的に使うようになり、お陰で以前より良い効果が出るようになりました。
(因みに、首に症状がある人を脈診するとかなりの確率で私と同じ様に肝経が弱くなっています。)
もちろん首には一切鍼灸はしていません
そうそう、いずれの患者さんも(私も含め)患部の首には一切鍼灸はしてません。
手足の要穴と背部兪穴、そして陰包だけです。
それでも、重症の寝違い、ムチウチ、頚椎ヘルニアが治っています。
人間の持つ自然治癒力は素晴らしいです。
(注):当院の経絡治療は脈診により使う経穴(ツボ)を決めています。
それは、経絡のバランスを調えることにより、その人が持っている自然治癒力を充分に発揮できるように手伝うことが経絡治療の役目だからです。
従って、症状によって使うツボを決めていません。
あくまでも乱れた経絡を調える為にツボを選んでいます。
でも、堅苦しいことばかり言っていても何ですから、脈診が出来なくても、少しでもご自分で治療するときのお役に立てたらと思い書きました。