病により経絡が乱れた状態とは、
病により経絡が乱れた状態とは、何らかの理由(主にストレスによる負の感情)により気の流れが滞る(ゴミが詰まった様な状態)ことで、ある経絡では健康時より気が溜まり過ぎ、その一方、別の経絡では健康時より気が流れてこない状態になっていることを言います。(※)
つまり、
気(エネルギー)が、十二経絡に最適に配分されて流れていない状態ということです。
このバランスが乱れた状態の十二経絡を調えるには、鍼灸を使って意図的に経絡のネットワーク全体に変化を生じさせることが必要になってきます。
(※):気の流れが悪く溜り過ぎている(多い)状態を「実(じつ)」、また、流れてこない(少ない)状態を「虚(きょ)」言います。
気の流れに変化を起こすことは
経穴(ツボ=壺)に鍼を入れる(刺す)と、その部位の気の流れに変化が起きます。
その変化がきっかけとなり十二経絡に沿って全身に伝播して行きます。
この気の流れを変化させる為に経穴に鍼を入れる行為は、
例えるなら、静か池の水面に小石を投げ入れたとき、水面に波紋が起こり広がっていく様子を想像してもらうといいと思います。
この波紋というのは、池に水路が繋がっていればそこにも伝わって行きます。
もし水路に交差点があれば、その交差点に繋がっている水路全てに波紋は伝わります。
経絡も同じで、経穴に鍼をすることによって経絡に沿って気の流れに変化(波紋)を起こすことになります。
その気の流れの変化(波紋)は、バランスの崩れている状態を最終的に最適化(安定化)する方向に進んでいくと私は考えています。
何処に鍼をしても良い訳ではないです
気の流れに変化を起こす為の鍼は、経絡上に反応があれば何処の経穴に刺してもよいということではありません。
効率良く十二経絡に影響を与える経穴を見つけ、そこに正確に鍼をすることが出来れば理想的です。
水路の交差点の様に経絡同士がお互いに影響を与えている部位(経穴)があれば、そこに鍼をした方が効果的に各経絡に同時に影響を与えられます。
脈診
まずは、脈診で十二経絡の状態を正確に把握します。
詳細は「脈診について」をお読みください。
選穴(せんけつ)
次に、使う経穴を決めます。
十二経絡は陰陽五行的にお互いが関係しているため、その事を考慮して脈診で把握したそれぞれの経絡の乱れの程度から一番効率良く影響を与える経穴を決めます。
この経穴を決めることを選穴(せんけつ)と言います。
ちなみにこの効率よく影響を与える経穴を特別に要穴(ようけつ)と呼び、昔から重要な経穴として知られています。
取穴(しゅけつ)
次に、その選んだ経穴を患者さんの身体で正確に見つけなければなりません。
大まかな位置は文献等で示されていますが、実際に見つけるには皮膚の微妙な反応に注意し、正確な位置と経穴の状態(大きさ・深さ・方向)が解らなければなりません。
この経穴を探し出す作業のことを取穴(しゅけつ)と言います。
取穴も脈診と同じで難しく、経験を積んで腕を磨くしか方法はありません。
手技
取穴が出来たら、その経穴に正確に鍼を刺さなければいけません。
経穴にずれて鍼をしても、気の流れに良い影響を与えられません。
(初学の頃、「経穴に2ミリずれて鍼をしても効き目はない」と先生に教えられました。)
そしてもう一つ、経穴への適切な刺激がいります。
それは、溜まり過ぎている経絡から気を他へ移す手技(写法・しゃほう)と気が少なくなっている経絡に気を集める手技(補法・ほほう)です。
つまり、経穴の深さ・方向を考慮して正確に鍼を刺し、適切な刺激をしたときはじめて一番効率よく経絡は反応してくれます。
全てが出来てはじめて経絡は調う
ここまで読んで頂いて分かると思いますが、大変シンプルな治療法です。
しかしその分、誤魔化しは利かず自分の技術が治療結果に現れる大変難しいものです。
脈診、選穴、取穴、手技の全てが出来てはじめて経絡が調い(負の感情がリセットされ気が正常に巡りはじめます)、身体が本来持っている自然治癒力を充分に発揮することに繋がって行きます。
言い換えれば、患部に鍼をしなくても治癒するように仕向けたり、病気の原因が現代医学的に不明でも治療が出来き、かつ、良い結果を得るには、これらのことが全て出来ていなければならないということです。
どのような患者さんがご来院しても、常にこの様に出来るように私も日々精進しています。
【重要】一番は心の癒し
ここまでは治療家である私の範囲ですが、良い結果を得るにはもう一つ重要な要因があります。
それが患者様ご本人の心の癒しです。
(心の状態が気という生命エネルギーの要なのですから)
これがなければ、いくら経絡を調えても乱れは直ぐに起こり身体はメッセージである病気を発症しせますので、このことは決して忘れないでください。