【臨床例】左顔面神経麻痺

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高齢者の左顔面神経麻痺

Tさん 80代 女性 (初診:2022/08/26)

8/23夜、左耳のあたりが痛む。今までにない痛みで不安になり脳に何かあるといけないと思い25日に病院で脳のCTを撮ったが異常なし。

26日の朝、口を濯いだら水がこぼれた。その日の夕方、左眉と左の口角が垂れているのを家族が見つけた。急遽、26日の夜に来院し鍼灸治療を開始した。

 

治療のすすめ方

当院では臨床経験から
「顔面神経麻痺、突発性難聴など神経に関わる症状の場合一日でも早く治療を開始することが大切。治療間隔もできるだけ連続(治療開始1週間は毎日が望ましい)で治療することが完治または後遺症を軽減させることに繋がる。」と考えています。

このことから経絡治療を最低1週間は連続で受けることが必要であると伝えました。

但し、いつも行っている自宅で指定した経穴に爪楊枝で刺激をするセルフケアはこの期間中はなし。
代わりに重要な経穴に皮内針(セイリン社製パイオネックス)を使用。

カウンセリングはなし。

 

使用した主な経穴

手三里、孔最、復溜、曲泉、陰谷、陽輔、束骨、上巨虚、背部兪穴など

(脈診に合わせて選穴しています。)

 

治療経緯と結果

初回の治療で左頬のこわばりが取れ、2回目からも少しずつ顔の違和感が軽減していきました。

治療開始3日目、ご家族の意向で念のために耳鼻科を受診してもらいました。
(私個人は鍼に対し十分に身体が反応しているので大丈夫であると思っていましたが、医師の診断がないことが不安であるとご家族が仰るので、その不安を払しょくする目的でご家族の意向に同意しました。)

そのとき医師からは、
「左顔面神経麻痺でしょう。しかし痛みがあった左耳あたりの皮膚にヘルペスの症状が見当たらない。その痛みも軽減している。麻痺症状も軽度(回復しつつある)。そして初めて痛みが出てから既に5日も経ち、ご本人が高齢であることを考慮すると、身体への負担がある抗ウイルス薬の処方しない方がいいと思います。(痛み止め、ビタミン剤などもなし、経過観察でよい)」
という診断がされました。

 

その日以降は、ご本人ご家族ともに安心し当院の治療に専念してもらえ、日曜も来院して計8回連続で治療をしました。

8回目まで残った口の症状ですが、麻痺がまだ残るものの、このとき水はこぼれにくくなりました。(瞼もほぼ閉じれる。ほうれい線や額の皺もできはじめ、眉も少し動くようになっている)

その後は、残っている症状も時間とともに自然治癒すると判断し当院の治療は終了としました。

但し、しばらくは自宅でのセルフケア(指定した経穴に爪楊枝で刺激すること)を勧めました。

後日(発症して約3週間後)「普通に戻りました。ありがとうございました。」とご本人から報告がありました。

 

考察

今回、Tさんが高齢にかかわらず治療が良い結果になったのは、

  • 発症から短期間で治療を開始できたこと
  • 開始から8日間連続で治療を受けたこと

の2点が大きいと思います。

当院の場合、顔面神経麻痺の患者さんの殆どが発症から1か月以上経ってからの来院です。(早くても1週間以上経ってます)
そして治療ペースも週に2~3回がやっとです。
これでは中々上手くはいきません。
できれば
早期の来院と治療開始から約1週間は連続治療をお勧めします。

尚、症状のある顔面には1本も鍼をしていません。自然治癒力を発揮させるために経絡を調える経穴に鍼灸をしただけです。

 

【お願い】

これは患者様の許可を得て書いた一症例です。
同じような病気・症状でも全ての方が、この様な経過で良くなることを保障するものではありません。
何故なら症状の改善や緩解には、患者様の意識・心の変化が大きく関わるからです。
その点をご理解の上、お読みください。

 

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