【臨床例】眩暈(めまい)

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経絡の乱れが原因と思われる眩暈(めまい)

Sさん 50代 男性 (初診:2022/01/31)

1/31の朝、起床するといつもと違い何か変な感じがする。フワ~とした感じ。
例えれば前の晩遅くまでお酒を飲んで残っている感じに近い。
ただ、昨晩の晩酌は量も飲んだ時刻もいつもと同じだからアルコールが残っているとは思えない。

昼頃、床に横になったら天井が回る感じがした。
起き上がると転ぶまでにはいかないが不安定を感じる。
試しに片足立ちをしたら立てるが不安定で転びそう。数秒で両足立ちになる。

ご本人曰く「これらは初めての経験です。」

尚、耳鼻科は未受診、鍼灸を受けてその結果で受診するかどうかを決めたいということ。

 

治療のすすめ方

今回のような場合、先に耳鼻科を受診してもらい特に重篤な原因がないと判明してから治療をします。
なぜなら原因が耳鼻科ではなく脳などにあった場合、処置が遅れると大変だからです。

Sさんの場合はご本人が大変な医者嫌いであり、先のリスクを十分に理解してもらった上で、「先に鍼灸治療をして治ればよし、もし改善がなかったらその時は耳鼻科を受診します。」と約束してくれたので例外的に治療を引き受けました。

いつの通り脈診に現れる経絡の乱れを一つ一つ鍼灸で調え、要となる経穴には皮内鍼を留置しました。

尚、当院の治療方針を熟知しているのでカウンセリングはなし。

 

使用した主な経穴

手三里、孔最、復溜、曲泉、陰谷、陽輔、束骨、陰包、背部兪穴など

(脈診の変化に合わせて選穴しています。)

 

治療経緯と結果

Sさん曰く「初回の治療で頸部の凝りが軽減。身体は軽くなった。いつものように緊張がとれた感じがして少し眠い。しかしまだフワ~とする感じは少し残る。」ということ。

ただ、脈は鍼灸で調いましたので気が正常に身体を巡り始めたと思います。
後はSさんの自然治癒力が治してくれますのでこのまま様子を見てもらうことにしました。

もし、一日以上経っても症状の改善がなかった場合や悪化した場合、他の症状が現れた場合は直ぐに病院に行ってくださいと伝えました。

 

翌日、Sさんから「昨日の晩、就寝しようと横になったら天井が回らなかったです。 その時になって思い出したんですが、そういえば治療後に少し椅子でウトウト眠ってしまい、その後起きてからはフワ~が気になってなかったと思います。つい忘れてました。  そして今朝は、昨日のような酒が残った感じのフワ~は無くいつもと同じ感じでしっかりしています。念のため片足立ちをしたんですが両目をつぶっても楽勝でできました。」という報告をもらいました。

この報告を受け私は重篤な原因はないだろうと推察しましたが、「しばらくは無理をせず様子を見て、何か変なことがあった場合は病院にいくように。」とSさんに念を押しました。

そして、しばらくは自宅でのセルフケア(指定した経穴に爪楊枝で刺激すること)を継続することも勧めました。

 

考察

今回、Sさんのめまいの原因は病院を受診していないので詳しいことはわかりません。

ただ、鍼灸師としての立場からSさんのめまいを推察すると、Sさんは肝経という経絡が元々弱くなるタイプですのでそれが原因と思われます。

なぜならめまいは肝経の変動に関わることが多いからです。

今回のSさんの場合、結果的に軽症ですみましたが、その一因は病の本質である経絡の乱れを早く調えたためだと個人的には思います。

 

通常、めまいを主訴として来院される患者さんは、Sさんと違い既に耳鼻科などを受診して抗めまい薬を処方してもらってますが、それでもスッキリ改善していない場合がほとんどです。

また、首肩の凝りが原因と考えられた場合は、首肩のマッサージなどを受けられていますが、それでも改善しないから来院される場合もあります。

いずれの場合も経絡の乱れが残っていることが原因であることが多く、その乱れを鍼灸で調えると快癒し易いです。

 

また、ストレスが原因で経絡を乱している場合もありますので、その時は鍼灸と併用してカウンセリング(心を楽にして気を高めるコツの説明)を受けてもらうと改善し易いです。

Sさんの場合は、当院を熟知していますので心のケアは不要でした。
年末年始の仕事と遊びからの身体的な疲労で起こる単純な経絡の乱れが原因だったと思います。

 

【お願い】

これは患者様の許可を得て書いた一症例です。
同じような病気・症状でも全ての方が、この様な経過で良くなることを保障するものではありません。
何故なら症状の改善や緩解には、患者様の意識・心の変化が大きく関わるからです。
その点をご理解の上、お読みください。

 

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